隊長の日々 「映画祭と私」
「私はいったい何をしているのだろう・・・」 初めて「しんゆり映画祭」を知ったのは4年ほど前のこと。お気に入りの俳優が出る作品が上映されるというので、仕事を休んで観に行ったのがきっかけだ。そして、作品の内容以上に、映画祭が市民ボランティアスタッフによってつくられているということに、私の心は揺さぶられてしまったのである。 そう思って4年。・・・なんだってそんなに経ってしまったのか。私のことだ、きっと他に面白いことを見つけてしまい、それに夢中になっていたのだろう。毎年、気がつくと既に映画祭は始まっており、募集のタイミングを逃していた。ちょっと逃しすぎ。今年になってようやく、スタッフ募集のチラシを見つけることができた次第である。 かくして、4年分の熱い思いと激しい意気込みで参加することになった私だが、まずは一年目、とりあえず様子を伺い、周りの出方を見て、自分にできることがあったら少しずつやっていこうと思っていた。いや、ホントに。やり始めると何でもやりたくなってしまう性格上、ちょっと控えめに、押さえ気味でいこう、そう心に誓っていた。まず、落ち着けと。いや、ホントに。ホントにホント。 おそらく、それ以前にも「やる気」を見せ始めていたのだろうが、大々的に見せることになってしまったのは、野外上映時の「チャップリン隊」であろう。 黒い帽子に、シマシマTシャツ、口髭をつけたチャップリン隊は、美術班に作ってもらった看板を首から提げ、駅前に出動した。Iくんのメロディオン演奏に合わせ、すずやカスタネットでぶんちゃかぶんちゃかリズムを刻む。「しんゆり映画祭で〜す。」「野外上映会やりまぁす!」「チャップリンの上映でぇ〜す。」道行く人に声をかけながらチラシを配る。チャップリンのメイクが怖いのか泣き出す子供もいたが、反応はまずまず。「楽しみにしてるよぉ」という声がとても嬉しい。もう、ほんと、みんな来てくれぇ〜という感じである。 そんな思いが通じたのか、お客さんは大入り満員。上映会は大成功に終わった。 「シネマウマ」とは、シマウマの縞の部分が映画のフィルムになっている「しんゆり映画祭」のマスコットキャラクターである。これまでにも、巨大シネマウマやシネマウマ・ベンチなど、様々なカタチで映画祭に登場してきたのだが、「シネマウマの被り物」はなかったらしい。作ろうという話にはなったが、作る人がいなかったとか。むむ。そう言われると俄然作りたくなってしまうのが私の悪いところ。「よっしゃぁ!私が作ってやろうじゃあないか!ぶははははー!」いったいそれは誰に対する挑戦なんだ?まったく、へんなところで意地を張ってしまうのだから困ったものである。 とはいえ、どうやって作ったものか。何の因果か、以前にも「馬の被り物」を作る機会があったのだが、そのときの馬は頭が重すぎて首がヘニャヘニャしてしまい、悪戦苦闘したのを覚えている。今回の課題は、この首を何とかすること。一緒に制作に当たることになったMちゃんのアイディアで朝顔を育てるときに使う支柱を土台にし、そこにスポンジを巻き付け、その上から布を被せることにした。これが見事、馬のカタチに。あとは耳と鼻を作り、タテガミをつければおおかた完成。残すは肝心のシマである。 歴代のシネマウマや図鑑でシマの具合を研究すると、なかなかフクザツになっていることが判明。当たり前だが、ただただシマシマになっているわけではないのである。タテガミもシマに合わせて白黒になっているのには驚いた。自然の神秘に感動。この子たちってば、生まれたときからシマシマなのか?てなことを考えながらシマを一つ一つ縫いつけてゆく。少なすぎてもおかしいし、多すぎてもバーコードのようになってしまうので配分が難しい。うう。これを合計3体作るのだ。先は長い。大丈夫か?自分。 そして、「ジュニア制作ワークショップ」上映会前日。カフェ・コーナーで焼き菓子を売ろうと、スタッフ4人で夜な夜なお菓子を焼き、同時にシネマウマの被り物を作ることになった。作業は徹夜になり、気がついたときは明け方5時。 ともあれ、シネマウマの被り物は想像以上のできばえで、大満足。駅前でも人気者になり、劇場にも度々登場。映画祭のために一役も二役も買っていたのではと自画自賛しているのだから懲りない奴である。 こうして隊長の日々は終わった(ほんとは、「チラシ配布隊長」など、もっといろいろやってしまったのだが、自分でもどうかしていると思うので、ここで辞めておくことにする)。新スタッフでありながら、5年目ぐらいの貫禄を見せてしまった私だが、「大変だったでしょ?」と聞かれると、よくわからない。大変だったのか?確かに、大変だったこともいっぱいある。でも、「自分のやりたいことしかやらなかった」というのが感想だったりもする。そして、来年もこの調子でやってしまうであろう自分が怖い。まったく、自分のことながら、今から先が思いやられるのである。 |
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