ポルノを見た夜

滝沢広美

今日、ポルノを見た。こう書くと、なんだかいかがわしい。ポルノはポルノでも、日活ロマンポルノなるものだ。今まで、見てみたいと思いつつも、うら若い女として映画館へ足を運ぶのがためらわれたあのポルノだ。

なぜ、私が日活ロマンポルノを見ることになったのかというと、しんゆり映画祭で企画した「ぽんぽこ」上映会という、映画祭のスタッフみんなとシネマハウスで映画(ビデオ)を鑑賞し、講師の方のお話を聞く会に参加したためである。今回の講師は白鳥あかねさん。今回見る作品『恋人たちは濡れた』の神代辰巳監督のスクリプターを長く務めた方だ。
そうとは知らずに見ていたのでドキドキしたけど、本当になさっているわけではないらしく、約10分に1回、いわゆる濡れ場があれば、あとは何をやってもOKな世界で、根岸監督や今は亡き相米監督の原点でもある。こんな数人で集まってポルノを見ている状況は100%以上あやしいけど、そんな心配はさて置き、とにかく映画は始まった。

舞台はちょっと寂れた海辺の町。松田勇作風の髪型の男、いかにも誘ってる感じの奥さん、男の友人とその彼女…。男はなんだかワケありで、影がある。その主人公にホの字(古い?)の女の子も出てくる。でも、簡単に話は進まない。自分のことを決して話そうとしない男はついに町を出るが、なぜか友人の彼女がバスについて乗ってくる。彼女の乗るバスに向かって、友人は車からミカンを投げる。なんだか様子がおかしい。それにしても、車になぜミカンが…。ポルノが、こんなにドキドキしたり、意外なストーリーだったり、笑ったりできるものだったなんて、知らなかった。

白鳥あかねさんのお話によると、実はBGMは軍歌で、衣装もちょうどその時に流行った服で、モザイクの代わりに入る黒い帯状の部分など、映画の部分部分に反体制というテーマがこめられているのだそうだ。なかなか奥が深いのである。他にも、このシーンを撮った場所はとてもせまくて、演じる役者さんの足が当りそうになりながら仕事をした、という裏のお話もびっくりだった。

濡れ場を入れるなどの基準を満たしながらも、全体を流れるテーマもあり、かつ惹きつけられたり笑ったりすることができるってすごい。エンターテインメントってこういうもののことを言うのかも…と妙に納得した。
日活ロマンポルノは、厳密にはポルノとは区別されるものだけれど、もしかしたら知らない人のほうが多い。私もそのひとりだったけれど、日活ロマンポルノの特集上映に行こうか迷っていた女の子を今度会ったときには誘ってみようと心の中で小さく、でも固く決意した夜だった。

後日、日活ロマンポルノをもっと詳しく知りたい!と思い、HPにアクセスしたら、アダルトなメールがたくさん来るようになってしまった。とほほ…。

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