ゴールデンウイークの最中、当映画祭の事務所で、森達也監督による「刑事(でか)まつり」の撮影が行なわれました。
事務所といっても、新百合ケ丘駅から数分の住宅街にひっそりと建つ小さなプレハブ小屋ですが、朝から準備を始め、あっという間に室内外に暗幕をはりめぐらし、撮影スタジオに早変わり。スタッフは、自称「雑用係」という「A」「A2」のプロデューサー・安岡卓治氏(当映画祭運営委員)と日本映画学校の3年生の学生さん達数名です。カメラや音声チェックも手際よく行なわれ撮影がスタートしました。
シリーズ第3弾「最も危険な 刑事まつり」
2003年5月24日(土)〜 シネマ・下北沢にて上映
|
「刑事まつり」とは、篠崎誠、黒沢清、青山真治ら12人の、日本の今を代表する監督たちが「気軽な自主映画を撮りたい」とスタートした企画で、昨年1月にオムニバス映画として公開。低予算にもかかわらず、多彩な作品が生まれ、大評判となりました。
この「わくわく」するような試みの、今回は第三弾。<最も危険な 刑事まつり>というテーマで、制作には次のような「掟」が掲げられています。
壱、主人公は刑事であること!
弐、完成尺は十分を一秒でも越えてはいけない!
参、本編中に最低でも五回ギャグを入れること!
|
というわけで、森監督のオリジナル脚本による『アングラ刑事』がクランクインしたのです。
登場人物は刑事2人と容疑者で、警察の取調室を舞台にした密室劇。椅子と机と電気スタンドというシンプルな設定に、3台のカメラが並びます。10数分、延々と刑事と容疑者のやり取りが続くワンシーン撮影は、舞台劇を見ているような緊迫感。ワンテークごとに、役者さんの集中度が高まっていき、監督は、その気持ちの流れを察知しつつ、狂気と笑いの世界をつくり出していきます。
さすが、ドキュメンタリー制作の辛苦を分かち合った監督とプロデューサーの息はぴったりとあい、ぐんぐんと撮影がすすみ、「はじけた」最後のテイクで「オーケー」が出て、無事撮影が終了しました。
Q 撮影が終わった感じはいかがですか?
森「3カメ回したので、ラッシュをみてからでないとわからないけれど、役者さんは、10分間ずっと切れ目なくやってもらい、台詞をいうのもたいへんだったと思います。でも、そのお陰で一つの空間になっている。充足感があります」
Q カット割りで撮影しなかったのは?
森「めんどくさかったんだよね。予算もないし、自主制作なので、簡単にしたかった。ベテランの俳優さんが参加してくれたので、芝居でいこうと。それにカット割りは生理的に辛いんだよね。彼(安岡さん)も、同じ意見だったし。さすがよく俺のことがわかっていると思った」
Q HP読者のみなさまへひとこと
森「『A』『A2』をイメージして、この映画を見ると、戸惑うかもしれない。これは、『熱海殺人事件』(作者:つかこうへい)のパロディなんだ。シニカルな部分はカケラもない。僕は、シニカルなキャラじゃないんです」
Q今後の予定は?
森「本が出る予定です。読んで下さい。『世界はもっと豊かだし、 人はもっと優しい』 (晶文社刊)。6月には光文社知恵の森文庫から『放送禁止歌』、角川書店から『ベトナムから来たもうひとりのラストエンペラー』、10月には下山事件を扱った『(仮題)SHIMOYAMA CASE』。それと『A」『A2』のDVDが7月末に出る予定です」
最後に、スタッフとして参加した日本映画学校のみなさんの感想 |
●鈴木輝幸さん
「役者さんの演技が、回を重ねるごとにテンションが落ちないでずーっとやれた。カメラからみていて凄いと思いました」
●本吉良太さん
「慣れない事ばかりだったけど、いい経験をさせてもらいました。ワンカットで撮るのは、あまり見た事なかったので」
●鷲田進さん
「通しの演技を見たのは初めて。生の演技は勉強になりました。それを撮影できてよかったです。あのロケ設定で、ああいう撮り方をするんだと、通しの中で理解できました」
|