撮影初日。「ライバル」は公園でシーン9を撮影。シーン9は、マドンナ美紀ちゃんを争っていた友宏と明が、「美紀ちゃんと進太郎が付き合っている」という衝撃の事実を知る、物語のクライマックスシーン。ロケハンで子供たちが考えていた公園から、場所を変更。別の公園でやることに。
監督や録音などの役割分担、撮影の手順は今日は様子をみながら。録音やカメラマンは、それなりにポジションが決まりましたが、スクリプターは子供たちにはなぜか不人気。書くことがたくさんあるし、責任重大だからでしょうか。結局、一人の女の子がやることになりました。はじめは、「ストップウォッチと両方はやりきれないよ。」ということで、ストップウォッチのほうはこっそり私がやることに。カメラのサイズなどで分からないことがあり、カメラマンや先生に聞きに行くと、「そんなことは自分で考えろ」と先生。後ろで聞いていて「厳しいな」と思ったのですが、しばらくするとスクリプトをやっているその子は、自分でストップウォッチを持ち、カメラマンの横で、なにやらびっしり字を書きこんでいました。勿論、私が頼りにならん、ということを悟ったためもありましょう。
役者さんを除くと、子供は4人、大変そう。しかし、私がビニールテープ一つを持っていても、「お姉さんにもたせるんじゃない。」と逆に子供たちが先生に怒られてしまう。所在なく、ずっと後ろのほうへ下がる。客観的に、全体を見回すと、撮影初日、加えて取材のカメラもあったためか、子供たちはかなりハイテンションの様子。特に役者さんたちは、本当に大きな声でよく笑う。この雰囲気が最後まで続けばいいのですが。撮影は予定分は無事消化。3時過ぎには解散。
それから、画用紙に自分の名前を書いていない(タイトル撮影用)藤井君と私(この2人はボランティア)とジュニアの一人は先生にしまうま本部へつれていってもらいました。
話は変わりますが、「しまうま本部」とはスタッフルームのことです。子供たちは、スタッフルームをしまうま本部と呼んでいます。「しまうまの耳」本部ではありません。しまうまがたくさんいるからです。だから「人間」の本部ではなく、「しまうま」の本部なのです。ちなみに子供たちはあれが「しねまうま」であることは気づいていない様子。この言葉の響きがとても好きなので、一緒になって使っています。
はっきりと確認したわけではありませんが、「ライバル」の脚本のもとを書いた子の命名ではないか、と私は目下、にらんでいます。誰よりも先生がこの言葉を気にっているようです。もともと私に「しまうま本部」のことを教えてくれたのも先生です。
画用紙に自分の名前を書き終わった子がぐったりしているので、しばらく休ませることに。「分かっていると思うけど、君が休んだらはっきりいってうちのチームの撮影は実質上ストップだ。」という先生の言葉。その子はちょっと笑ってうなずく。なにも言わなかったけど、相当うれしかったんじゃないか、と思われる。
5時過ぎ中学生の子を送っていく。途中、「こんなに本格的とは思わなかったっすよ。」とワークショップの感想を言ってくれた。もっと、講習が主なのだろうと想像していたらしい。また、部活を休んでいること、顧問の先生には話して許可をもらっているが、先輩や後輩、皆が理由を知っているわけではなく、それがつらいということ、週4日くらい空手に通っていて、両立が難しいことなどを話してくれた。
ビニールテープの件、送っていった件、こういう場合、子供とどこまで、どのように関わるか、というのは本当に難しいとつくづく感じます。子供たちも何人もいて、皆とどのくらいの距離を持つか、ということも理屈ではなく、実際にはなかなか思うようにはいきません。
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