しんゆり名画座〜再生

ルナ・パパ

1999年/ドイツ・オーストリア・日本/107分
監督/バフティヤル・フドイナザーロフ
出演/モーリッツ・ブライプトロイ、チュルパン・ハマートヴァ
99年東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞。

STORY

マムラカットは歌や踊りが大好きな、女優を夢見る少女。戦争で精神を病んだ兄、厳格な父と3人で美しい湖畔の村に住んでいる。ある月の晩、彼女は名も知らぬ男に誘惑されて妊娠する。閉鎖的な村の中で、孤立しつつ家族の結束を強めていった彼らは、お腹の子の父親を探す旅に出て…。マムラカットは国家や大地を、彼女を妊娠させた男は侵略者を象徴しているという。ファンタジー溢れる寓話に込められた深いメッセージ。

COMMENT

あれよあれよと思う間に転がり出すストーリー、こんなのあり!?のこの物語は、内戦後のタジキスタン国境地帯という過酷な舞台から生まれたおとぎ話である。主人公役のチュルパン・ハマートヴァが、かつての宮沢りえちゃんにも似て実にかわいらしい。次々に襲う苦境にも消えない輝きと、生命にあふれている。この存在感は、どんなに傷つこうともやがて乗り越えるだろう、という希望の種を観るものの心に残してゆく。

作品紹介 堀越謙三氏(ユーロスペース)

上映後、本作を共同プロデュースしたユーロスペースの堀越謙三氏の解説があります。

堀越謙三(ユーロスペース代表、映画美学校代表理事)
ヴェンダース、張芸謀、クローネンバーグ、トリアー、カラックス、キアロスタミらを日本に初めて配給。海外との共同製作を中心に『書かれた顔』『スモーク』『TOKYOEYES』『クリミナル・ラヴァーズ』『POLA X』等をプロデュース。

オール・アバウト・マイ・マザー

1999年/スペイン/101分
監督/ペドロ・アルモドバル
出演/セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス
99年アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞。

STORY

臓器移植コーディネーターのマヌエラは、小説家志望の息子と二人暮らし。彼は「お母さんのことを書きたい。別れた父親のことを教えて」と言ったその直後、交通事故で死んでしまう。彼女は自分の過去に向きあうべく、元夫・エステヴァンと暮らした地バルセロナへと向かう。そこで出会ったのは、エイズに罹ったエスティヴァンが妊娠させたまま残していった修道女、性転換を果たして女になった男、息子の死に関わりがある大女優など…。

COMMENT

登場するさまざまなシチュエーションの女たち。彼女らはみな闘っている。孤独と、ジェンダーの壁と、病気と、死と、過去と。そして愚痴ったり、泣いたり、笑いあいながら、お互いを支えあっている。繰り返し何度でもわたしはこの映画を観ようと思う。平穏無事に幸せでいたいけれど、一度でも絶望しない人生なんてあるだろうか?あるワケない。だとすれば、絶望から這いあがるすべ、泣きながら前進する勇気を持ちたい。この映画にはそれがてんこもりである。