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しんゆり発、21世紀へ向けて
ここから始まり これから始まる 「しんゆり映画祭」も4年目を迎える。石の上にも3年ではないが、そろそろ運営も楽になるのではないかと期待したが大外れ。毎年新しい企画が提案されるので忙しさは募るばかりだ。”これでは日本映画学校のカリキュラムと同じじゃないか”とグチると、安岡、橋本両運営委員(映画学校講師)から”自分でまいた種じゃないですか”と笑われた。
さて、今年の映画祭だが、大きくは「ヤングシネマ」「しんゆり名画座」「バリア・フリーシアター」の3つの部門に分けることが出来る。 今年のヤング部門はエネルギー溢れる台湾映画を中軸に据え、日本や東南アジア諸国、さらにインド映画を加えた多彩なプログラムに挑戦することになった。テーマは”アジアの熱い風”込められたメッセージは、経済は冷えても映画は熱い!不況などモノともしない母なる大地の底力に触れ、元気を取り戻そう!である。 しかし、一方で私たち日本人もそろそろ経済的幸福論から脱却して新たな価値観を模索すべき時ではないかという思いもある。せめて映画祭の間だけでも経済繁栄の自縛から解放され、奥行きの深いアジアン・メンタリティーに触れ、魂を思いっきりリフレッシュしたいと願うのは私だけであろうか。いずれにしても、ヤングシネマは2001年開催の国際映画祭に向けてゆっくり離陸し始めたと言えよう。 ヤングシネマが「かわさき国際映画祭」として独立すると、「しんゆり映画祭」は当初の目的だった”市民が良き映画を楽しむ映画祭”を充実させていくことになる。とは言え、4年前とは異なり新百合丘にも9館もの映画館(マルチプレックス・シアター)が出来たので、単に良き映画を市民に供給していくだけでは意味がない。 こうした新たな状況を踏まえて私たちは議論を積み重ねた。無論、私たちだけでは井の中の蛙になってしまうのでワーナー・マイカル・シネマズ新百合丘泉川支配人と意見を交わしたり、佐藤忠男氏が主催する日本映画学校の土曜映画会(公開講座)を視界に取り込んだ上の検討である。そうした結果、フレームは少々アバウトだが、「しんゆり名画座」の設置を決定した。 実はこの「名画座」構想には映画祭スタッフの様々な思いが込められている。30歳以上のスタッフには過ぎ去った青春の映画の時間であり、20代にとっては”東京にしか存在しない””今、消え去ろうとしている貴重な映画館”なのである。現に、ここ数年で首都圏にあった名画座は軒並み姿を消してしまっている。 私にはこの誌上で名画座の効用について語るつもりはないが、経済原則を金科玉条に振りかざし、行く世代もの映画ファンが作り上げてきた文化的状況を見殺しにするこの国や社会に、たとえようのない悲しみと怒りを感じてしまう。無用な公共事業の莫大な損失には目を瞑っても、零細な映画館主の経営困難には差し伸べる手すら持たないのであろうか? くどいようだが、私はもういちど、名画座には様々な思いがあると書こう。 ”日本中から名画座が消えるならば、自分たちが新百合に21世紀の名画座を作ろう”という市民スタッフの決意と心意気を伝えたいからだ。たとえ短い映画祭の期間だけでも良い。仕方がないではないか。「しんゆり名画座」もここから始まり、これから始まるのである。 しんゆり映画祭は名画を上映するだけではない。様々なゲストを招き、観客とともに映画を楽しみ人生を語り合う場である。映画を媒介として、日本人外国人を問わず様々な人達が新百合という広場で運命的な出会いをする、そうした文化的状況を作っていく祭りである。様々な人たちには、勿論、身体に障害を持った人達が入っていなければならない。 障害を持った人達は、人生の毎日を運命と戦っている勇者なのである。私たちは、こうした不断の努力をしている勇者たちと共に映画を楽しめるホームタウンをつくりたいのだ。 こうした理由から委員会では「バリアフリー・シアター」部門を設置することにした。これもまた、”日本の映画業界がやらないならオイラたちがやろう”という市民スタッフの心意気から生まれた企画である。準備の問題もあり、初年度の今年は2日間の開催だが、是非多くの方々に参加していただきたいと思っている。
1998年 8月15日
「しんゆり映画祭」実行委員長 武重邦夫
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川崎市 芸術のまちづくり推進会 |
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文化庁、神奈川県、川崎市教育委員会/川崎新都心街づくり財団/川崎市生涯学習振興財団/日本映画学校 |
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昭和音楽芸術学院/日本オペラ振興会/洗足学園大学/川崎市文化財団/麻生区文化協会/川崎市国際交流協会/川崎ボランティアセンター |
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(株)ワーナー・マイカル/新百合ヶ丘ビブレ/小田急エージェンシー(株)/小田急新百合ヶ丘エルミロード/新百合オーパ ホテルモリノ新百合丘/新百合ヶ丘マプレ専門店/新百合丘農住都市開発株式会社/かながわ・ゆめ国体川崎市実行委員会 |