Part2(1月17日、18日)

2001年1月17日(水)
我々を凍りつかせた出来事とは・・・・。皆さん、気になったでしょ!今だから笑い話で書けますが、実はカメラが故障してしまったのです!! その晩食事を済ませた我々は、いつものように今日撮った撮影ラッシュを見ようと準備をしていました。 そう、通常撮影ではこうして毎日撮った映像を見てチェックしたり、確認したりするのです。 準備万端整い、さあ見ようか!という体制になったのですが、どうも撮影部の様子が変なのです。
「どうした?」「いや、ちょっと待ってください」・・・・・さっきまでののんびりムードはどこへやら、スタッフルームも兼ねる食堂内にピーンと張り詰めた空気が立ち込めます。
「・・・カメラの具合がよくないみたいです」 悪戦苦闘してくれたカメラマンの松根から出た言葉にスタッフ一同凍りつきました。 さてはこの豪雪と厳寒が影響したのか?それにしてもこのロケは色々なことがおこるなあ・・・。 原因は不明。症状はカメラの電源を入れると送り側のローラーが勝手に回りだしてしまう、というものでした。 詳しい説明はここではしませんが、いずれにしてもこれでは撮影続行は不可能です。なんでこんな大事な時に・・・16年ぶりの大雪を撮る絶好のチャンスだというのに・・・。


といって嘆いていても始まりません。急いで東京のプロデューサーの中川さんに電話し、状況を説明。現場の要求を伝えました。 中川プロデューサーの判断は、とりあえず明日なるべく早く代替カメラを持っていくので、それまで待っていてほしいとのこと。 この豪雪が一段落しないうちにあれも撮りたい、これも撮りたいと思っていた我々スタッフとしては生殺しのような状態ですが、この状況では仕方ありません。 でも、中川さんの電話を切ったあと、もうひとつの心配が頭をよぎりました。中川プロデューサー、ここまで辿り着けるのだろうか・・・・・?


一夜、明けて僕の心配が現実になりました。この豪雪の影響で新潟地方は関越自動車道が一部通行止めに、そしてJRの各線も雪のため 一部運休していたのです。最初、車で来ると言っていた中川さんを説き伏せ、絶対に車で来てはいけないといったまではよかったと思ったのにまさか、鉄道までストップしてしまうとは・・・。あー、おそろしや16年ぶりの豪雪。 とりあえず、無事に中川さんが辿り着くことを祈りつつ、待つことにしました。 宿舎でジッとしていても仕方ないのでカメラマンの松根+助手たちは撮影に必要な備品を買いに隣の広神村まで出かけ、僕はバッテリーの上がってしまったロケ車の修理をお願いすることにしました。


午後1時、予定より早く中川さんから電話が入り、我々は新幹線の止まる浦佐駅まで迎えに向かいました。電話で無事辿り着けそうだという 話だったのでひとまず一安心。なんでもなんの不具合もなくここまで来れたそうで、 スタッフ一同 上越新幹線に感謝しきり。いやいや、上越新幹線はたいした鉄道です。 無事到着した中川さんに状況説明をし、新しい代替カメラを受け取り、その場でチェック。中川さん、どうもありがとうございました。 おかげで撮影再開できます。新幹線で東京に戻る中川さんを見送り、すぐに現場へ戻ることにしました。 さあ、これからが本番だ。気を取り直してがんばるぞー!

2001年1月18日(木)
昨日は現場に戻って小川八一郎さん(トンネルを掘った人。82才)の家の雪下ろしを撮影したが、これはこれで大変だったが今日はもっと大変な撮影だ。 小松倉の集落は縦に長く、山あいに広がっているので撮影が難しい。集落の全景を撮ろうと思うと、どうしても谷をはさんだ向こう側の山から撮らなくてはいけない。しかし、向こう側の山へ行くためには何メートルも積もった豪雪をかきわけていくしかないのだ。 普段は農作業のための道として機能している道だが、冬の間は村人も一切足を運ばない道である。(昔、ウサギ狩りのハンターが通ったことは あるらしい) 村人に相談したら、一笑に付された。
「あんたたち、気は確かか?悪いことはいわん。やめときなさい」
確かに何メートルの雪を掘りながら進むしかないわけなので、素人の我々では大変だということはわかる。 でもこのカットは絶対に必要なカットだし、この豪雪はこの先またある確証があるわけでもない。スタッフと相談し、強行することにした。 前日、購入しておいた「かんじき」を履き、シャベルとダンプと呼ばれる雪かき用の道具を持って現場に向かう。 でも一応、念のためにいつもお世話になっている松崎六太郎さんの所に寄り、出発の 報告をすることにした。「万が一の時はよろしく」という意味である。こちらの気負いとは裏腹に、六太郎さんは言った。
「ハハハ、まあ頑張んなさいや。」


「かんじき」を履き、シャベルで雪を掘りながら少しずつ進む。計算では2時間ぐらいで向こうの山に辿り着けるはずだが、とりあえずひと掘り ひと掘り進むしかない。交代で掘りながら体力の温存をはかる。最初は口も滑らかだが、そのうち、みな段々寡黙になってくるのがわかった。 そのうち、雪も降り始め、運の悪いことにいつのまにか吹雪になってきた。 でもここまで来て引き返すわけにもいかない。スタッフの一人がポツリとい う。
「なんとなく八甲田山で遭難した人たちの気持ちがわかりますねー」
「ハハハ、・・・そ、そうだね」
こちらもさすがに動揺は隠せない。 そんな中、またも試練が我々を襲う。道がなくなってしまったのだ。これまでは雪に埋もれていたとはいえ、進むべき道はわかったし、わずかな残跡を頼りにここまで掘り進んでこられた。でも、ある所から全く道の跡がなくなってしまったのだ。 万事休す!さあ、どうする!吹雪のなかで立ち往生しながらまわりを見渡すと、あたりはすべて雪に隠れ、来た道さえも判別が難しくなっていた。 夏のロケハンで見たときの印象を必死で思い出そうとしたが、どちらに道があったかどうしても思い出せない。 僕は万が一にと思って持ってきた携帯電話を握り締めながら、覆い尽くす雪をただ茫然とみつめるしかなかった。

※毎度お騒がせの撮影隊。あわれ撮影隊の運命やいかに・・・・!
17日の分はなぜか「ですます調」になってしまいました。ご愛嬌だと思ってご容赦ください。(橋本)

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