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開催日:2013年10月10日(木) ゲスト:広田奈津子監督 司会:寺田裕実子(映画祭スタッフ)
talk-3

広田監督:では、皆さんの意見や質問をお受けしながら、もうちょっとお話していきたいと思います。

 

観客1:素敵な映画をありがとうございます。知らないこともたくさん教えていただきました。なかに出てこられたアレックスさんは今、どのような生活をされているんでしょうか?
広田監督:アレックスは今、子どもが4人生まれて、お父さんをしています。私たちが最初に会ったのは11年ぐらい前ですけども、知ってる限り定職に就いたことは一度もない感じで(笑)、今もお給料がもらえるような仕事は持っていないんです。でも、彼らにとって仕事と呼ぶことはたくさんあって。村の子育て、橋を直すなど、いろんなお仕事があって、稼ぎと仕事は別にしているわけですね。で、アレックスは仕事の方がいっぱいある人。今は農民の権利を守るような、なんというか、日本で言う労働組合よりももっとローカルな感じの、そういった組織のリーダーをやっていまして、その仲間から必要なものは全て回ってくるから大丈夫という風に言っていました。最初の子どもが産まれた頃は「子どもは産まれたけど家がない」なんて笑ってたんですが、今年会いに行ったら、ちゃんと家に住んでいまして。まあ、屋根が完成すれば申し分ないんだけど、という感じだったんですが。とても元気に暮らしていました。

観客2:一言で申し上げますと、大変感激しました。大変メッセージ性の強い映画だったと思います。私ともう一人、友達も来ていますが、独立した2003年の暮れから約1年、東ティモールにいたんですけども、全然見えていない東ティモールを教えていただいて、改めて感激しました。ありがとうございました。
広田監督:ありがとうございました。
 
観客3:私も2007年、東ティモールに1年間、シャナナ・グスマン大統領とその後のラモス=ホルタ大統領の補佐官をやりました。今質問された方は2003年に1年間、グスマンの大統領補佐官で、経済と財政の補佐官で行きました。で、結論から言いますと、もう、その前の状況が分からなくて、定宿はサンタクルスの近くにいたんですが、サンタクルスであんなすさまじい出来事が起きたのか、と。東ティモール国民の舐めた悲惨さがわかりましたし…。2010年にJICAの仕事で行った時には何もなかったんですが、2007年に行った時は、まだまさに相当の家がインドネシア軍に焼き討ちされて、ディリの町で国内難民が公園などにテントを張っているような状態でした。監督にお伺いしたいのは、私も1年間、テトゥン語を勉強したんですが、この映画はほとんどテトゥン語で。インタビューされたのは監督ですか?
広田監督:はい。
観客3:監督はじゃあ、テトゥン語は日本で勉強されて行かれたということですか?
広田監督:はい、テトゥン語は現地で覚えました。
観客3:すいません、質問はそれで、あとは感動、感動、涙、涙でした。ありがとうございました。
 (拍手)
広田監督:ありがとうございました。

 

観客4:私も子どもを持つ身として、戦争で親を亡くしたお子さんたちの面倒を皆さんで見るという……あれは、自然な感じに集まって面倒を見る、ということなのでしょうか?
広田監督:映画でもありましたように、お母さんと呼ぶ存在が何人もいるんですね。「いとこ」「おじ」「おば」という言葉がないので。「家族、何人?」って聞くと「368人」とか、そんな答えが返ってきます(笑)。3人に1人が亡くなったということはもう、おびただしい数の孤児の方が生まれたわけですが、孤児院はもちろんあるんです。しかしそれでは全く数が足りないはずですが、各家庭に吸収されてるような感じですね。私の友達も結婚したというから家を見に行ったら、彼らはまだ子どもがいないのに、もう9人くらい子どもが一緒に住んでいました。そんな感じです。
観客4:そういったときに、養育費とかそういう補助などはどこかの国からちょっと出るとか?それとも、みんなで助け合ってるという感じですか?
広田監督:そうですね、みんなで助け合ってるというのが実情だと思います。補助は、独立のゲリラ兵で傷を負った方に政府から補助が出る、というのはあるんですが、各家庭にはもちろん行きとどいていません。アレックスもそうですが、失業率がすごく高いんでよすね。私の周りで言うと、10人に1人くらいが仕事を持っているくらいなんですが、そのほかの9人はじゃあ何をしているかというと、村の仕事を毎日なんだかんだしているわけです。で、稼ぎがある1人のお金を、何ら悪びれず必要な時は使うという感じで(笑)。そういう風に回っていましたね。
観客4:ありがとうございました。ただ、私としましては、今日チラシを見せていただいて、日本がインドネシアに加担したというのがわかって、何か、日本国民として非常に恥ずかしい、何というのかしら、資源をめぐる大国のエゴというものが世界中のいろんな人に、いっぱい、今も犠牲を出しているんだな、ということをつくづく思いました。ありがとうございました。
広田監督:ありがとうございます。