かつて、映画には音がありませんでした。映画館には楽団がつき、映画には字幕がつけられました。日本では映画のストーリーや登場人物のセリフを説明する「活動写真弁士」という人が映画館に専属でいて、大変な人気を博しました。中には「あの弁士が説明するから」ということで映画を見に行くお客様もいたくらいの人気だったそうです。
やがてトーキー映画の時代が来て、弁士という職業は成り立たなくなってきました。それでも日本の語りの芸能の伝統を受け継ぐ「弁士」は、いなくなったわけではありません。私たち(山内、山城)は2009年に活動写真弁士・澤登翠に入門、現在若手弁士として頑張っています。
サイレント映画は、もちろんサイレントのままでも充分面白い作品がほとんどですが、弁士の説明が入ることにより作品の魅力がより深まるのではないか、と思います。
今回の「なつやすみ野外上映会」で上映する作品は、どれも短い作品ですが、映画が生まれてまだ日が浅い時代の熱がこもったものばかりです。
史上初のSF映画「月世界旅行」、日本の初期のアニメーション「日の丸太郎」、世界三大喜劇王から、ハロルド・ロイドとチャーリー・チャップリン、その二人とほぼ同じ時期に活躍したラリー・シモン。これらの、成長期真っ只中の映画の熱気に負けないように、私たち若手弁士も張り切って説明したいと思います。
活動写真弁士 山城秀之
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